長年奥様の介護を頑張っていた方が、奥様を無くされてから元気をなくし
ご自宅にこもりがちとなってしまいました。
ごみ出しも、隣の方(ちなみに我がデイサービスの職員さんでもあります)が替わりに出してくれていました。
心配したご家族の勧めもあって、デイサービスのご利用も始めたのですが
いま一つ、乗り気になれず
ご自宅での暮らしぶりにも、あまり良い変化が見られていませんでした。
そんな方が、先日自宅まえの道路を歩いているのを偶然見かけました。
曜日といい、時間といい、方向といい、これはもしやと思い声をかけてみたら
「ごみ出しに行ってきた」
とのこと。
その方の気持ちの変化を嬉しく思い、デイサービスに戻ってみると
ちょうど、その方の隣に住む職員さんがいたので
「○○さん、ゴミ出ししてましたよ」
と伝えると、こんな話を聞かせてくれました。
何でも、先日、○○さんが自宅の周りに除草剤を撒いている姿を見かけたそうです。
それくらいの元気が出てきたのならと思い、こう話しかけてくれたそうです。
「これから天気のいい日は、ゴミ出しもしてみたらいい。
勿論、天気の良くない日はこれまでどおり、俺がやるから」
この話を聞いて、本当に感心してしまいました。
お隣さんだから、付き合いも長く、お互いをよく知っていて、信頼関係もある。
お隣さんだから、顔を会わせる機会も多く、変化を含め様子も良くわかる。
だから、適格なタイミングで、声掛けが出来た。
また、手伝っていた内容を一度に全部返すのではなく
天気の良い日だけやってみたら…と段階的に受け渡すことで
受け入れる方も気持ち的に楽になる。
まったく見事なサポートではありませんか。
その職員さんは、デイサービスの職員としての○○さんとの付き合いよりも
隣人としての付き合いの方がずっとずっと長いわけで
まずは隣人として、当たり前の行動をとっただけ
そんな爽やかさまで感じさせてくれる、今回の出来事でした。
長年介護の仕事に携わってきて
それなりの知識も経験もあるつもりではありますが
状況によっては、そもそも地域自体が本来持っている介護力にはかなわない。
そんなことを改めて認識させられました。
介護サービスと優先座席って似ていると思います。
優先座席では、困っている人に席を譲る必要があるわけですが
それは優先座席でなくても同じこと。
そして、皆がその気持ちをもっていれば
そもそも”優先座席”なんて指定は必要ないのです。
介護サービスでは、高齢者の方が必要な援助を受けられます。
でも、向こう三軒両隣をはじめ地域の方は
介護サービスなんかより、ずっとその方を知っていて
場合によっては、より的確に援助することもできるわけです。
勿論、全部が全部というわけにはいきませんが
特に介護予防という範囲でいえば
”地域のチカラ”に敵わないことが多々ある。
そんなことを改めて感じさせてくれた今回の出来事でした。