ある日、訪問すると玄関が施錠されていました。
事前の取り決めにより勝手口にまわって入室すると、
小さく丸まった背中を見つけました。
声を掛けてお邪魔すると…
「色々と忘れたり、わからなくなったり、体もダメになったよ。
施設へ行くことになったけど、その日付もわからない。
でも、もう何も心配することはないよ。」
わずかに微笑んでそう話す姿に、胸がいっぱいになりました。
ご本人もご家族も、歯を食いしばって必死に頑張ってきた姿を見てきただけに、
思い出いっぱいの我が家を離れることに覚悟を決めたその決意を
いつも通り「お大事にどうぞ。また来ますね。」と声を掛けて
最後の訪問を終わりにしました。
住まいは移っても、どうか笑顔でいて下さいますように。